君の隣りに、俺が居てもいいですか?
【君の隣り】
side:田島
眼が覚めたら外は快晴。
今日も野球、頑張るぞーー!!!気合十分で俺は家を飛び出した。
「た、田島君…おはよ」
「あっ三橋おはよーー!!!」
学校の近くのコンビニの前で俺は三橋と待ち合わせをしていた。
部活で、クラスで、俺はずっと三橋と一緒だけどそれだけじゃ足りない。もっともっと一緒に居たくて、
「なー、遠回りして学校行こうぜ」
「えっ、でも遅刻…」
「大丈夫だって!!ほら、手ぇ繋ご」
「う うん」
差し出した手に収まる冷たい手。それを暖めるように包み込んで、俺達は歩き出した。
コンビニを越えて、田んぼの畦道、普段は行かない道をただ散歩して。
段々と三橋の手が暖かくなってきた。
「そろそろ学校行こーか」
「うんっ」
俺に緊張しない三橋。繋いだ手を離そうとする気配も無く、少しづつ縮まる距離が見てわかるから、俺は横に居る。
それが当然となる日を夢見て。
少し慌てて部室へと駆け込む。
すると、丁度部室から阿部が出て来たところだった。
「はよーーーっす!!」
「阿部、くん おっ おはよっ…」
元気に挨拶。
驚いた表情の阿部。眉間に皺が寄ったのは気のせいか。
「あっ…。おはよ」
挨拶も適当に、阿部は一点を見ていた。
視線を辿る。
下へ、
下へ、
それは俺が握る、三橋の手に行き着いた。
「ニシシ、遅刻ギリギリー」
「たっ田島君が寄り道…するから」
「だって三橋と歩くの好きなんだもーーん」
気付かないふりをして、俺はふざけながらも急いで部室へと入った。
「なぁ今日は一緒にバッテリ組もーぜ」
「えっ…ぅう…」
着替えながら話し掛けて、三橋からは困った様な唸り声が聞こえた。
「えー三橋俺とじゃ嫌なの?」
「ちがっ……でも…」
「でも何だよー」
こんな事言うつもりじゃなかったんだけど、三橋が言いたい事判るから意地悪く問い掛ける。
聞きたくないけど、聞かないと気が済まない。
上手く説明できないけど、今の俺はそんな気持ちでモヤモヤしていた。
「阿部君じゃなきゃ嫌だよ!ってこと?」
「……ぅん」
「え?聞こえなーい。はっきり言って」
「っ……阿部君じゃない と 俺はただのダ…ダメピーで」
あ〜あ、言っちゃった。ま、別に良いけどね。
こんなのいちいち気にしてたら、俺早死にしちゃう。爺ちゃんよりも早く死ぬなんてヤダもんねー。
「わかった。じゃ、それまでは一緒に手ぇ繋いでよ?」
「うんっ!!」
「わりぃー遅れたーー」
ケラケラと笑って二人が到着。これで全員が揃った。
(阿部はずっと三橋を見てんな…)
朝練の初めは瞑想から。
俺は三橋を連れて輪に入る。阿部からわざと離すように、距離を置いて。
三橋の隣になった沖が話し掛けている。今日は手が暖かいね、なんて言われて。三橋は本当に嬉しそうに笑った。つられて俺も笑っていた。
真剣に!シガポに注意されて、慌てて目を瞑り、気を落ち着かせた。
「……」
不意に感じる視線。そちらへ目をやると、バチリ、阿部がこちらを見ていた。
違う。
これは睨んでいるんだ…俺を。
阿部のキモチは知ってるから。でも、俺にもキモチはある。だから視線を逸らさず、真っ直ぐに見てやった。
そうこうしてる間に瞑想時間は終わって、次は各自の守備強化。皆一斉に散らばって、俺は花井と沖の元へ走っていった。
「今日は変化球やってよー」
「簡単に言うなっ!!」
「ちぇー」
あっちに気が行かない様に適当に話をして、真剣に捕手の練習。
それでも気になって三橋を目で追ってしまう。
阿部と何かを話す姿。遠くからでも判る二人の笑顔にイライラして、溜息が出る。
先程まで自分が握っていた手を阿部が掴み、手首を入念に慣らし互いに確認。
野球は大好き。
だけど、速く終わらないかなーって思う。終われば、三橋はまた俺の元へと戻ってくるから。
三橋の隣りに、俺が居れるから。
投球練習で朝練は終わってしまう。
本当に短い時間。それでも、俺にとっては長い時間。
三橋と離れ離れな、お前の側に居れない、嫌いな時間。
朝練が終わって、それぞれがクラスへ戻り、俺は三橋の手を引いて教室に入る。
「お前らほんと仲良いよなー」
「へへー。羨ましいだろー」
「いっ…泉くん、も手、つなご」
「今度なー。で、二人は宿題やったの?」
「「宿題っっ??!?!」」
すっかり忘れていた俺と三橋は慌てて机からノートを出す。一つの机に向き合って、教え合いながら埋めていく。
コツン、時折触れる互いの頭。三橋は半ベソで宿題をやっていて気付かないらしい。
俺は嬉しくて何度もにやけた。わざと当ててみたり、触れてみたり。
この時間が本当に大好き。
アイツの居ないこの空間はこんなにも心を軽くする。
醜い嫉妬で俺達の関係を壊したくないから、今は何も言わないし、言いたくない。
授業が終わって部活が始まって、三橋はまた俺の横から居なくなる。
君の隣りは誰の場所?
早く、俺の気持ちに気付いて欲しい。
END
阿部サイドも宜しければ!