夢の内容って話すと現実に起こらなくなるなんて良く言う。
でもそうじゃなくて、見た夢を語って一緒に実現出来るよう頑張るのも、同じ夢なんじゃないかなって思う。
【夢語り】
「三橋ー!」
早朝練習の為にメンバー達が集まりだす部室内。
相変わらず騒がし田島だが、三橋が眠気眼で姿を現した途端に先程の元気が更に倍増。
おはよーと雄叫びを上げて名を呼んで飛び付いて、まだ覚醒していなかった三橋は見事に扉へと叩き付けられた。
「う、うう……痛、い」
半泣きで痛いと訴える三橋だが、田島には聞こえなかったらしい。幸せそうに頬擦りして抱き締めて、昨日振りの再会を噛み締めていた。
「おい、三橋から離れろよ」
言ったのは阿部。怒りに眉を上げてフルフルと震えている。
メンバー達はその怒りに賛同して頷くばかり。
「怪我したらどーしてくれんだって」
冷却スプレーを田島に吹きかけながらも阿部の怒りは収まらないらしく、田島と三橋の間に割って入って引き裂き始めた。
傍観していたキャプテンの花井もやっと今自分がしなくてはいけない事に気付き田島を羽交い絞めにする。
その後にゾクゾク続く泉や沖。当の田島は何だよもーと怒り心頭。三橋はと言うと、まだ眠りから覚めてないのかボーっと扉に寄りかかり放心状態。
「三橋怪我したかッ?」
田島が相変わらずの大声で聞いてくる。
その声にやっと目を覚ましたのか、三橋は体中を器用に確認して大丈夫だよと笑顔を見せた。
「嘘付くんじゃねーぞ」
「大、丈夫!」
「本当にか?」
「うん!」
過保護な阿部の問い詰めも笑顔で交わし、やっと静寂が戻った部室に花井はホッと一安心。
着替えも済んだメンバー達は一人また一人とグラウンドへ駆けて行く。残ったのは着替えの遅い三橋と田島だけ。
「ごめん、ね」
「焦んなくてもいいから」
「田島君、は いいひと、だ!」
「そう?」
ニヒヒと嬉しそうに歯を見せられて、三橋もつられてヘニャリと笑う。
集合時間まであと数十分。もう少し、この場でのんびり出来たらなーなんて思ってしまう。
「夢みたんだ。聞いてくれる?」
「夢?」
「三橋が出てきてさ、凄い幸せだったんだ」
「お、俺 が?」
キラキラと眩しい位に見詰めてくる田島に、三橋は戸惑いながらもその内容が知りたくて着替えの手を休めてしまった。
それを見た田島は、さすがに着替えないとまずいと思い外出たら話すよと付け加え。
「忘れる前に話さないとって思ってさ」
「で、でも……夢、は話さない方がいいって、お母さんが」
「いいの!聞いて欲しいから」
「……うん!」
少しだけ慌てさせたせいで、三橋のユニホームは皺くちゃになっている。ベルトの中に手をつっこみ直そうと齷齪してるのを手助けしてみたり。
漸く全ての準備が整った二人は花井から預かった鍵で部室の鍵を閉め、ニコリと笑い合い外へ飛び出す。
「でさ、夢の話なんだけど」
一人楽しそうに笑う田島。
きっと夢の事を思い出したんだろう。三橋は早く教えてくれないかなと熱い視線を送る。
「俺と三橋はプロ野球選手になって同じ球団でプレーしてたんだ」
「ほ、ほんとッ!」
「んで、家も一緒だった」
「家、も?」
「ずっと一緒に居るんだ。凄い嬉しくってさ」
「俺もッ嬉し、い」
三橋の瞳が田島同様キラキラと輝き始める。
それを見て更に満足そうに笑みを溢す田島は、並んで歩いていた体を一歩先に出して三橋の前に立ち歩みを止めた。
「夢を夢のままにしたくないって思うんだ」
手を握った。強く、強く。
三橋の手はポカポカに暖かかった。それって不安じゃないって事だろ?
返事が欲しい。出来れば俺と同じ考えであってほしいだなんて。
「三橋はそんなの嫌?」
人の将来なんて他人が勝手に決めるもんじゃないってじいちゃんが何回も教えてくれた。
でもそれじゃ駄目なんだ。三橋が居るから俺の将来があると思う。だから聞きたい。三橋は俺の夢、一緒に実現させようと考えてくれるだろうか。
「嫌……じゃ、ない!」
「本当?」
「お、俺なんかが田島君の側 に 居ていいか判んない けど、一緒に居れたらな、って思う よ!」
真っ先に考えた理想の返事。
夢から覚めるにつれて断られたらどうしようって考える様になって不安だった。
「無理してない?」
「してない」
「やっぱ止めたなんて無しだかんね、ゲンミツに」
「言わない、絶対!」
曇りかけてた心が一気に快晴になった。
飛び跳ねたい気持ちを一杯籠めて、一番言いたかった言葉を伝えよう。
「これからも宜しくな!」
「こちらこそ、よ、宜しくお願いしま、す!」
二人見上げた空は雲一つ無い快晴。
夢を実現させようと誓った二人に、太陽が燦々と応援している様だった。
END
清い関係で頑張りましょう。