本日、日曜。
当然の事、学校は休み。
でも部活に休みなんて無い。
甲子園という大きな目標がそこにはあるから。
でも毎日早朝からと言うのは辛いので、今日の部活は午後からと昨日話し合った。
「……どうすっかな」
昼には到底早い時間、寝てる奴が大半だと思う。
家でゴロゴロしてても仕方ないし。
「早めに行くか」
きっと三橋は慌てて来るだろうから、ピッチャーマウンドを整えておこう。
そんな事を考えて、俺は鞄片手にさっさと家を出た。
【子供二人と大人な俺】
「なーどれにする?」
「え、と……う〜ん…」
もう少しで学校が見えてくる、そんな時、よく知る背中が俺を向かえて。
「三橋に田島?何やってんだ??」
不審に思いながらも声を掛けた。すると、グルリ勢いよく振り返るシンクロな二人。
「あー阿部だー」
「お、おはよ…阿部君早い、ね」
それはこっちの台詞だ。寝坊で有名な二人が、集合時間には早い今ココに居るのだから。
「はよ。で、こんなトコで何してんの?」
見上げればそこは一軒の店先。学校帰りに寄る学生も多い、駄菓子屋だった。
「ソフトクリーム食べようと思ってさ」
田島はニシシと子供の様に笑顔を見せて、三橋はアイスのイミテーションに釘付け。
可愛いななんて見惚れた自分。ハッ!とイケナイ考えに気付き、掻き消す様に首を振る。
「俺チョコミックス〜!」
「ぅ、あ…俺、も 同じのが いいっ」
「何だよ〜マネすんなよ〜」
「マネ じゃ ない!」
キャッキャキャッキャ。小猿が戯れているのかと見間違う今の風景。阿部はぼんやりとそれを眺めて一息。
ガキ。
その二文字が視界から脳へと伝達された。
「三橋、アイスは一個だけだぞ。腹壊すから」
「うっうん!」
「で、阿部は何にすんの?」
「えっ、俺?」
しゃがみ込んだ二人から、上目遣いの輝く眼差し。
まあ今日は暑いからな、たまには二人に付き合ってやるか。
「じゃ、俺はバニラすっかな」
「マジ?!え〜俺もバニラにしようかな〜」
「ぅおっ!お 俺もっ どうし よう」
「あー三橋またマネしてんじゃーん!」
「マネっ じゃ ないっ!!」
ハイハイ喧嘩しなーい。
阿部は二人の間に割って入り、駄菓子屋へ入るように促した。
「早く食べよーぜ」
「うん!」
今の今までの口喧嘩は一体なんだったのか。田島は三橋の手を引いてレジに駈けて行った。
「疲れる……」
見てるだけで飽きない二人。外から見える無邪気な顔に、阿部から僅かな笑みが漏れた。
「ほんと、ガキだな」
子守をさせられてる兄貴になった気分だ。そう考えながら、阿部も駄菓子屋の中へと進んでいった。
「はいよ。落とすんじゃないよ」
「「はーーい!!」」
先に注文していた二人は同じタイミングで店のおばちゃんからアイスを受け取る。
ありがと!!!!特大のソフトクリーム片手に二人は外へと飛び出した。
「阿部ー先食ってていい??」
「おー」
やれやれこれで暫くは大人しいだろう。
阿部はレジのおばちゃんに注文を終えると、店内へと目をやる。小学生の頃から変わらない、駄菓子やオモチャの山。
と、レジの奥に野球ボールの入ったプラスチックケースが雑に置かれていた。
阿部の視線がそちらへと注がれる。
「はいよ、落とすんじゃないよ?」
「あっ、はい」
見入っていたせいで、急に声を掛けられ驚いてしまった。
おばちゃんから特大のソフトクリームを受け取り、阿部はそそくさと店内を後にした。
「「あああああああああああっっっ?!?!?!!」
外へ出るなり、突如耳を劈く大きな声。
「なっ、なんだ?!」
慌てて声の方へと駆けつけて。
「三橋っ!田島も何やってんだ??」
自分の目の前には、向き合った二人が屈み込んで、呆然と地面を見ている怪しげな風景。
阿部は二人の異変に気付いてしまった。
手に、二人の手にアイスが 無い ?!
「まっ…まさか、お前ら…」
嫌な予感が頭を過ぎる。いやいや、さすがに高校生にもなってそんな…。
恐る恐る二人の元へ、呆然と下を見詰めるそこを覗き込んだ。
「??!?!」
予感的中。言葉が出ないとはこの事か。
「あっ、あべ くん 」
三橋は俺の存在に気付いて、涙で溢れた瞳をこちらに向ける。
「阿部〜!!」
田島も同様、半ベソで俺を見上げて。
「お……お前ら本当にガキかよ!!!」
「だって三橋のアイスの方がでかかったんだもん!」
「田島くん の ほうが チョコ多かっ た 」
「まさかとは思うけど、取り合いなんて……」
いや、これ以上は聞きたくない!!これ以上俺を幻滅させないでくれ!!!
西浦のエースと四番がそんな恥ずかしい事、絶対に有り得ないだろっっ!!!!
「したよ。取り合い。んで、落とした!!!」
「田島君が あ 暴れる からっ!!」
「三橋だって暴れてただろ!」
ぎゃーぎゃーと喚く相変わらずな二人に、やっぱりガキだ!この二人は同レベルだ!!と阿部は、ハァと大袈裟に溜息を付き二人に自分の持っていたアイスを差し出した。
「ほら、食え。二人で半分な。喧嘩すんなよ!」
「マジ?!阿部って優しいな!!」
「阿部君 あり がと!!」
はいはい、どういたしまして。
完全に疲れ果てた阿部は、喜ぶ二人を置いて日陰の下へ。
二人が食べ終わって学校へ行くのを待つことにした。
「次俺がチョコ〜」
「じゃ、俺 は バニラ 」
無邪気に一つのアイスを頬張る二人。それを眺めて、安著の溜息。
は〜今日もいい天気でよかった、早く部活してーな。
そんな事を考えて、もう暫く二人を待つ。
「…あ」
そうだ。何かを思い出した阿部はテクテクと駄菓子屋の中へ。
「うまかった〜!!!!」
「口の中 まだ 冷たい!」
ニヒヒ〜互いに顔を見合わせて、阿部にありがとうを言おうと姿を探す。
「あれ?居ねぇぞ?」
「先行ったの かな 」
置いてかれた〜。ショックに眉を下げる二人は急いでカバン片手に学校へ、と。
――ペンッ!
ドコからか軽い何かが当たる音。ん?と田島はその音のする駄菓子屋横の空き地へ。
「あ〜阿部!!なになに?!それ何??」
そこにはボールをコンクリの壁に投げている阿部の姿。
「スッゲー懐かしくってさ。ほら、ゴムの野球ボール」
「おおおお!!!俺も持ってた!」
「俺も!!持って た 懐かしい ね 」
貸して貸して!!!子供が二人、阿部に飛び付いておねだり。判った判った、なんて言いながら阿部も楽しそうに笑っていた。
その後、三人仲良くボールを投げあい学校へ到着。
ゾロゾロと集まってきたメンバーとゴムボールを使って野球ごっこ。阿部は遠くからそれを眺めて、遅れてきた花井は何やってんだと驚き顔。
直ぐにモモカンが到着して、本格的に部活が始まった。
三橋は俺にボールを返して、ありがとうと満面の笑み。田島はまた一緒に寄り道しようなって大きく手を振って。
ガキの世話は大人な俺の役目だな。阿部はそう考えて、苦笑いを溢しながら円陣に加わった。
END
お守りをする阿部君。案外いけそうだな、なんて簡単に考えて書いてみました。
結構な違和感ですねorz