「阿部っくん!!」
部活も終わって、家に帰って。晩飯も食ったから、後は風呂入って寝るだけ。
そんな時に母さんからコンビニで弟のジュースを買って来てくれと頼まれた。
自分で行けよと言ってみるも、子供の夜歩きは危ないでしょとお叱りを受けた。じゃあ俺は子供じゃないのかよ。そんな文句もアホらしくて喉で止めた。
で、渋々コンビニへと向かう俺。夜は風が冷たいから過ごしやすい。そんな事を考えながら、ダラダラと歩いていた。
不意に掛かった声。
直ぐに振り向けば、息を切らした三橋が立っていた。
【風邪の心地良い夜】
「三橋?」
驚きに目を丸くしていたら、俺の懐に三橋が飛び込んで来た。
「お前っ、なんでここに?!」
「お母さん の 友達、住んでる から」
「あ?」
また始まった、三橋のはしょり癖。田島ならすぐ判るだろうけど、今の俺にはさっぱりで。
「友達がなんだ?」
聞き返したら、三橋はある一軒の家を指した。そこには、見覚えのある車が一台。
ああ、なる程。
三橋は母さんと一緒にその友達とやらの家にお邪魔しているって事だな。
なんとなく、意味を理解して改めて俺は自分に抱き付いている三橋へと視線を送った。
「家入んなくていいの?」
「いい、の」
「そっか」
サワサワと二人を取り巻く涼風。
「阿部くん、は どうして?」
「ああ、俺?俺はコンビニまでパシりだよ」
「急いでる、の?」
寂しそうに俺を見上げる綺麗な瞳。今そこに写っているのは自分だけ。そう考えると、なんか、こう…ムズムズするって言うか…。
「……急いでないよ」
冷静に。自分にそう言い聞かせながら。
「阿部くんに 逢える と 思わなかった、から 嬉しい 」
「俺も。すげー嬉しい」
三橋の柔らかな頬に手を添えて、互いに重ねた唇は暖かかった。
パシりってのも悪くないな。
なんて考えた、風の心地良い夜。
END