お前が好きだよ。
これからも、ずっと。
【いつも、君だけを。】
「三橋!」
「ふひっ?!」
授業も終わって、今からが本番の時間。俺は日課となった「こいつ」の迎えに来た所。
名を呼べば、毎度の事ながら怯える姿。もう慣れた。が、正直な気持ち。それでも、どこか傷付く自分がいたりして。
「あ、あ阿部く、んっ…」
入り口の前で腕を組んで待っていた。直ぐに駆けて来るこいつと目が合って、緩む頬。
「授業中寝てないか?」
「う……」
「まったく。今日の夜勉強会な」
「うぅ〜…はひぃ〜…」
これも何時もの会話。少しでもお前と一緒に居たいから。
口実作ってでも、俺はお前の側に、いる。
「きょ、今日もいっぱい…投げたっ」
夕暮れも終わりを迎えようとする、部活の帰り。俺は三橋と共にゆっくりと歩いていた。
「疲れたか?」
「ううん。阿部、くん…は?」
「平気」
学校から、三橋の家まで。今から勉強をしに行くんだぞ。変な事考えてんじゃねーよ、俺。モヤモヤと頭を埋め尽くす邪な考えと、一人格闘していた。
「ち…散らかってる……けど」
「知ってる」
何度も来てるから。
「今っ、ジュ…ジュース持って…来る」
パタパタと軽い足音。一人残った俺は、部屋を一周、目で追った。
これで何回目だろうか。でも、それはきっと数えれる程の短い回数。まだお前の全てを俺は知っていない。
野球の為に。そんな事じゃなくて。お前の事、一人の人間としてもっと知りたい。
今はまだ、遠い。
「おっおまたせ…」
「サンキュ」
お盆にお菓子とジュースを乗せて。それを机の上へと置く。俺はすかさず三橋を自身の横へ座る様に促した。怯える様に伺って。それでも従う様に、腰を落とした。
ほら、こんなにも遠い。
体の距離じゃなくて、ココロの距離、が。
「三橋は、さ…」
「ふひっ?!」
「……そんなビビんなよ」
その態度に、慣れたくは無かった。でも、傷付く事を恐れた結果がこれ。視線の定まらないこいつの見て、無理矢理にでも合わせ様と覗き込む。
ふ、と。視線を下へ落とせば、こいつの手が見えて。気付けば無意識に、手を握っていた。
「あっ、阿部…くんっ?!」
「手、冷たいな」
「う…あっ……ごめ、ん」
「あやまんなって」
これは緊張してるからなのか?俺といると、落ち着かないからか?
「……お前が、好きだよ」
「えっ…」
「いつも、お前だけを見てる」
お前のその性格は、中学ん時の暗い過去のせいだと決め付けていたけど。
俺、か?俺がそうさせてるのか?中学の奴等と離れても尚、ビクビクとしているのは……俺の、せい?
「これは…お前にとって、迷惑な事か?」
答えは聞きたくない。どうせ、お前の事だから迷惑じゃないよって困った顔を見せるんだ。
知ってるさ。優しい奴だからな。その言葉がどれだけ人を傷付けるかなんて知らないんだ。
「……迷惑じゃ…ないよっ」
デジャブ。俺の何かが、プツリと音を立てて切れた。
――ガタタタッッ!
「――ッ」
鈍い、音。机の上のグラスが揺れる。コロコロと鉛筆が転がって、ポトリ音も無く床へ。
室内を包む静寂。コチコチと時計の音がやけに響く。窓の光に映し出された影は、重なっていた。
俺の目の前には三橋の顔。驚きで目を開いて、震えてる。怖がらせるつもりは無かったけど。
止まらなかった。
「阿部っ…くんっ!?」
「……」
「手、痛いっ」
上から覆いかぶさって。三橋の細い腕に体重を掛けていた。
「キス…していいか?」
「うっ…」
瞳に溜まり始めた大粒の涙。結局、泣かせてしまう最低な男。
「ぅうっ…ふ……っっ」
返事なんて聞かなかった。このままだと、俺はお前に何するかわからない。
これ以上は傷付けたくないんだ。だから、これだけ。この我侭は通させて貰った。
これで、俺とお前との関係も終わってしまうのか。バッテリーとしては組んでもらえるだろうか。今までの関係を、維持出来るのか。
そんなことを頭一杯考えながら、俺は静かに、唇を離した。
「阿部くんっっ!!」
三橋の声に耳を傾けることも無く。俺は横に置いてあった自分の鞄を手にした。そのまま勢い良く立ち上がって。ドアノブまで後僅か。
「俺っ、阿部くんが…好きっ!」
珍しい、三橋が出す大きな声。
「いいよ…もう」
惨めだな、俺。こいつに何を言わせたいんだ。
ただ側に居たかっただけ。なのに、この関係を自らぶち壊して。
「良く、ないっ……!」
「三橋…」
「俺、阿部くんの事……大好きだか、ら」
何だよ…。なんでそんな必死なんだよ。
「もっと…キス……したい…」
「っ!?」
その言葉が余りにも唐突で、嬉しくて。格好悪いけど、俺は半ベソで三橋を見ていた。
一方通行じゃない、ココロ。お前の側に居て良いと言う安心感。
次の瞬間、俺は三橋を抱きしめていた。
「三橋…」
「阿部、くん」
コツン、互いの額を合わせて。俺の手は、しっかりと三橋の手を握っていた。さっきの冷えた手はそこには無くて。今は確かな温もりが伝わってくる。
「キス…していい?」
「うんっ」
重なり合った唇は、深く深く。握り締めた手は離さない様にときつく。
いつも、君だけを。
これからも、ずっと。
END
おお振りにハマって、速攻書き上げた小説でした。
しかし、あのアニメはアベミハ推薦にしか見えないですよね。